第一章
 特徴3 順逆纏絲の螺旋運動

 拳譜の規定:

 (1)“勁を運用する時には蚕の繭から糸を引っ張りだすだすように(抽絲)”;

 (2)“勁を運用するときには繭を巻き取るように(纏絲)”;

 (3)“広がる動きをする場合も収める動きをする場合も、絶対に太極の原則から離れるべからず”

 (4)“達人がひとたび太極を動かせば、迹象化完帰烏有(兆しを化しただけで無にすることができる?)”

  以上4つの規定からわかるように、太極拳において勁を動かす時には必ず繭から絹を取り出すような形でなければならない。絹を取り出すときには回転させて巻き取るが、直線にひっぱりだすときもそれは回転の中にあり、自然に一種の螺旋状態が形成され、直線と曲線という反対の現象が統一されるのである。纏絲勁或いは抽絲勁というのはこの状態を指している。

 纏絲の過程では伸縮する四肢も同様に一種の螺旋現象が発生する為、大きく開く動作であれ小さくまとまった動作であれ、とにかくこの対立しつつも統一された太極勁から離れてはならないと拳論では強調されている。これに熟すると纏絲の巻き込みは練習すればするほど小さくなり、回転しているのに回っているように見えないという境地に達し、その時には純粋に意を以って知るのみ(①楊少候氏が晩年に創始した楊式太極拳の小架式では勁の動きを見ることはできず、目に見えるのは発せられた勁のみである。これは運勁の際の回転運動が小さすぎて視る事ができず、結果として発された勁のみが外に現れるという具体的な表現であり、コンパクトで円が見えないという熟練の域に達した功夫である。)となる。よって順逆の纏絲による対立しつつも統一した螺旋運動が、太極拳の3つ目の特徴である。

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